ビジネス情報収集のAI化という未知の冒険を支えるデータ組織

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ビジネス情報収集のAI化という未知の冒険を支えるデータ組織

ストックマークでData Intelligence UnitでUnit Leaderをしている坂本です。 今回はこのData Intelligence Unit(通称データチーム)の取り組みを紹介します。

ストックマークのサービスについて

ストックマークは、「Anews」と「Astrategy」という2つのサービスを提供しています。

現在我々はAnewsをメインで担当しているため、Anewsを中心にお話しさせていただきます。Anewsはニュース、論文、特許といった様々な情報を国内外35,000メディアから集めてデータベース化し、企業ユーザーに対してAIによる最適な情報配信を提供しています。既に非常に多くのお客様にご利用いただいております(参考:https://stockmark.co.jp/news/20220913)。このAnewsは以下のような特色があります。

  • エンタープライズ企業における情報収集をAIで最適化するという、未知の領域を開拓している
  • 製造業の研究開発を中心に、様々な業種や職種のユーザーに使っていただいている
  • 数千万に及ぶ記事データや論文・特許データなど、多種多様なデータを扱っている
  • 組織全体で利用していただき、情報共有の場としても活用できる

ニュースや論文、特許を扱ったサービスは数多くありますが、我々のサービスはビジネスに特化しており、ビジネスに関係した情報を中心に扱っていること、ユーザー1人1人のビジネス上のニーズにAIの力で的確に応える必要があることが大きな違いになります。

私の関心を可視化したワードクラウド

上記はAnewsのデータから最近の私の関心をワードクラウドにしたものです。最近のトレンドを反映して生成AIへの関心が非常に強くなっていますが、それ以外にもAI系のサービスを提供している各企業の動向ウォッチ、自分の職務であるデータ分析やデータマネジメント、お客様であるTDK様の動向など、私1人を例にとっても非常に多様な関心を持っていることが分かります。このような関心にフィットした情報を的確に届けることができれば、その人の業務生産性を大きく上げることができます。

(ちなみに、私は時間があれば各種ニュースサイトやSNSを見るほど情報収集好きですが、Anewsでしか出会えない情報も多く、1ユーザーとして手放せないサービスになっています。)

しかし、個人のニーズを捉えることは簡単ではないですし、ビジネス向けだと組織の方針や業務ミッションが大きく影響します。そのような複雑な状況を的確に把握し、事業として成長するためにどのようなアクションを実行すべきかを考えるためには、データを活用してユーザーの解像度を向上し、機能リリースなどの施策が効果を上げているかを確認したり、データを基にして新たな仮説を生み出すといった取り組みが重要になってきます。

データ組織について

データチームは2023年の5月に新設された組織で、社内のデータ活用を推進する役割を持っており、以下のようなミッションがあります。

  • 社内のあらゆるデータを集約して誰でも活用できるようにするデータ基盤の構築と運用
  • データ基盤を基にデータ分析を行い、より良い意思決定を実現する
  • データ基盤とデータ分析の知見を活かし、データ活用による顧客価値創出の研究開発

データ基盤の構築と運用

データ基盤は社内の各所に存在するデータを一箇所に集約し、裏側の仕組みを意識することなく社内の誰でも使えるような形にしています。

データの集約元としてはAurora, OpenSearch, Salesforceがあります。弊社のサービスはAuroraをDBとして採用しており、アプリケーションのデータだけでなく分析用のログも格納しています。また、これとは別に、ニュース・論文・特許を格納したOpenSearchが存在し、またビジネスプラットフォームとしてSalesforceもあります。

データ基盤の構成

アーキテクチャはBigQueryをベースとして構築しています。BigQueryに対して、troccoを使って各サービスからデータを転送してデータレイクに保存しています。データレイクに保存されたデータは、データウェアハウスおよびデータマートを通じて、BIツールにより社内のユーザーが利用できる形式で提供されています。

BIツールはRedashを中心に使っていますが、用途によってはスプレッドシートを使うことも多いです。Redashのクエリは一元管理しており、必要なクエリがあればSlackの専用チャンネルで依頼してもらい作成する形になっています。

データ分析の実施

データ基盤に集約したデータを基にしたデータ分析もデータチームで担当しています。

前述したように、Anewsはとても複雑度が高いサービスであるため、正解が分からないことも多く、分からないなりに仮説を立てて施策を実行し、それをきちんと評価することが重要です。そのためにデータ分析は重要な役割を担います。

具体的には各種施策で設定した目標が達成できているかを分析したり、他チームからの依頼で特定のテーマに沿った分析を行うこともあります。また、プロダクトマネージャーと協力して、KPIの設計やダッシュボードの作成も行います。それ以外にも、CSの方がお客様とコミュニケーションを行うために利用状況を可視化したレポートを使うこともあり、そちらの支援も行います。

定量的な分析が中心になりますが、ユーザーのニーズは多様で、かつビジネス向けだと単純な集計では把握できない様々な要因が複雑に絡み合うことも多いので、ユーザー1人1人を深掘りするN1分析も重視しています。N1分析では対象ユーザーをピックアップし、そのユーザーに関するデータをできるだけ多く集め、そこからインサイトを導き出します。データを集めるだけでもそれなりに大変なので、効率的にN1分析を行うためのツールを内製して使っています。

また、デザイナの方が実施するユーザーインタビューと組み合わせたり、ビジネスサイドの人の顧客インサイトも取り入れるなど、我々のチームだけに閉じずに社内全体で分析に取り組むように意識しています。

データを活用した研究開発

設立してから半年の間にデータ基盤の構築やデータ分析はかなり安定して行えるようになってきたのですが、より直接的に顧客価値にコミットしたいという想いがありました。そのため、データを活用した機能の研究開発もスコープに入れ始めています。

このミッションはまだ始まったばかりですが、以下のような内容を予定しています。

  • プロダクトの開発は別のチームが担当していますが、その中でもニュース配信などのデータ活用機能に対して、データ分析の知見を活かしたアルゴリズムの改善の提案や、リリース後の評価を行う
  • 企画や開発を支援するためにユーザーの関心を可視化するモデルを研究開発する(前述したワードクラウドもこの研究成果を使っています)

チームとして育つための取り組み

データチームは私も含めて3人で構成されており、少数精鋭チームとなっています。データ活用はエンジニアリングやデータサイエンス、ビジネススキルなど必要とされるスキルが非常に広いため、日々スキルアップの取り組みをしています。

一例として、ストックマークの開発系のチームでは研究日という仕組みがあり、月に1日各個人でテーマを設定して自由な活動をすることが推奨されています。最近では、オープンソースのLLMを動かしてみたり、コンサルタントの思考術の本を読んだり、推薦システムに関する文献を調査するなど各人が様々なテーマに取り組みました。

今後の予定

設立して半年が経ち、かなり安定して業務を回すことができるようになってきていますが、まだまだやりたいことが山積みになっています。

以下に代表的なトピックを挙げます。

データ基盤のさらなる進化

データ基盤はまだ発展途上の状態です。データウェアハウス、データマートもまだ十分でなく、直接データレイクを参照しているクエリも多数存在している状態です。今後の事業成長や利用者の増加に合わせて、より堅牢で使いやすいものにしていく必要があります。

データ分析の質・速度向上

データチームはエンジニア出身のメンバーが多く、データ分析も手探り状態で始めました。半年の間に分析の型をかなり作ることができましたが、まだまだ質や速度を改善できると考えています。そのために、スキルアップの取り組みを継続的に行ったり、LLMなどを活用して一部を自動化していくことを検討しています。

データ民主化の促進

設立直後は社内にデータ活用のノウハウが十分に蓄積されていなかったため、データ分析はできるだけデータチームが担当することにしました。しかし、Anewsのような複雑度の高いサービスを成長させていくためには、社内の様々な役割の人の知見を統合して進めていく必要があります。そのためにも、今後はより全社でデータと向き合い活用する文化を作っていきたいと考えており、チームで獲得したノウハウを他チームにも展開していきたいと思っています。

新しい仲間を募集中です

データチームの取り組みを簡単にご紹介しました。

ストックマークのサービスは未知の領域を開拓するものであるため、それを支えるデータ活用の取り組みがこれからさらに必要になっていくのは間違いありません。

この新しい冒険を一緒にしてくれる仲間を募集しておりますので、もし興味を持たれた方はぜひカジュアル面談をお申し込みいただけると嬉しいです。

気になった方はぜひ 採用ページ をご覧ください!